Jump to navigation
『東京奇譚集』村上春樹
ISBN-4103534184
2005年9月
新潮社
1400円+税
216頁/四六判上製角背
装画・挿画=松永かの
装幀=新潮社装幀室
日本人が必ず読んでいる作家といったら、昔は夏目漱石やら森鴎外やらだったけれども、今では村上春樹の方が先に名前が挙がるかもしれない。それなのにこのサイトに載せるのは初めてで……といっても全く読んだことがなかったわけではない。もう20年以上経つのか、『ノルウェイの森』を読んでから。
書店で目立つ、赤と緑のカバーの単行本をブームのさなかに読んだ。20年ちょっと前の私には理解のできない、心に響くこともない本だった。その後、大人になった今なら理解できるかもしれないからもう一度読もうかと思ったり、村上春樹ファンの人から「あれは春樹らしくない本だ、あの1冊で春樹を判断してはいけない」などと言われ、ならば違う作品を読んでみようかとも思ったけれども、結局手がのびることのないまま、その後1冊も読むことないまま今に至る。
それでもこの本を読む気になったのは、短編集であったからだろうなあ。ピンクがかった本文用紙に適度に太くて黒い文字も読む気にさせる要因かも。
「奇譚集」の名の通り、ちょっと不思議な話が集まっているのだが、最初の話を読んで、わりと好きかも、と思う。2つめを読んでかなり好きだと思う。けれど“ちょっと不思議な話”はその2つだけで、3つめからは“だいぶ不思議な話”になってきた。そして一番最後の話が全く好きになれないんだなあ。短編集って1つめの話がとても大事なのだが(それによって読み続ける気をなくすこともあるのだから)、最後のも結構大事だ。好きになりかけていた気持ちがしゅうっとしぼんでしまうもの。
それから『東京奇譚集』という題名もなんかしっくりこないような。
でもこれからはまた村上春樹の本を読むことになるだろう。20年間の封印をとくにはぴったりの本だったかもしれない。
about book design...
本文は秀英細明朝体。この繋がった文字、なんだろうとずっと思っていたんだけどね。秀英系だとは思ったけど、ここまでつながったのは見本帳になかったから。が、やっとわかったよ、大日本印刷でしか刷れない細明朝体てのがあったのね。
カバーまわりよりも本文の方が好きだな。読みやすいし、扉のイラストがいい。
『ブルー・ローズ』馳星周
ISBN-4120037665
ISBN-4120037673
2006年9月
中央公論新社
各1500円+税
上:354頁/下:308頁
四六判上製丸背
装幀=松昭教
なんかあまり今どきの作家の本を読んでいないなあ、なにせ一番最近読んだのはチェーホフだし、仕事柄ちょっとまずかろう、と時折読んだことのない作家の本に手を出すようにしている。
で、馳星周。『不夜城』が映画になったせいもあり(デビュー作だったのね)なんとなくどんな本を書く人なのかぼんやりと想像できていたのだが。いろいろある中からこの作品を選んだのは、だいぶまえに朝日新聞の読書特集のときに載っていて書名をメモしておいたから。でもAmazonのレビューを見ると、この本はあまり馳星周らしくないらしい、なんでも「ノアール感」が少ないんだとか。なんだそりゃ。
主人公の元刑事が行方不明になった警視監の娘を捜すように頼まれるところから物語は始まる。娘の一癖ありそうな友人たちが出てきたところでこれからどんな謎解きが始まるんだ?とわくわくするが、それはあっさりと知れてしまう。どうやら謎解きを楽しむような本ではないらしい。楽しむべきは警察の権力争いなのね、と上巻は一気に読み終わり下巻に突入するのだが。
下巻になるとまた様子が変わる。権力争いは相変わらずなのだが、やつらはそのためならなんでもする、みたいなセリフが何度も出てくるけれども、いくら「なんでも」と言ってもあまりにドンパチやりすぎ、人が死にすぎでしょう。別に小説なんだから現実的でなくてもいいのだけれども、昔石原軍団の刑事ドラマが好きだったのだが『太陽にほえろ』ははまったのに『西武警察』はあまり見なかったのはドンパチ以外のストーリーの魅力の違いだ。で、この本も物語自体に惹かれないから、人が死に、主人公が強すぎると思わされるだけのシーンを繰り返すたびにしらけてしまう。
暴力だけでなく性的な描写も多いのだが、大人なのでそういったものを嫌うつもりはないのだけれども、全然官能的じゃないのね。だからやっぱりしらけてしまう。暴力や性の過激なものをてんこもりにして、どうだ!と出されても魅力を感じないよ。まるで電車の中でスポーツ新聞の後ろの方を見せられたような気分、と思ったらこの作品、「東京スポーツ」で連載されていた物なのね、なんとなく納得。
多分もうこの人の本を読むことはないだろうなあ、といってもあくまで嗜好の違いなので、こういうのが好きな方はいっぱいいると思うけど。
『すぐり』アントン P. チェーホフ/イリーナ・ザトゥロフスカヤ=絵
Крыжовник/Антон П. Чехов/Ирина Затуловская/児島宏子=訳
ISBN-4896421604
2006年10月
未知谷
2000円+税
58頁/A5判上製角背
チェーホフなんてなかなか読もうという気にならないのだが、この本に手がのびたのは、古典文学らしからぬ薄いしゃれた作りと絵本といってよいほどの中にふんだんに使われたイラストのせい。
実際これは絵本だろう、ほとんどの見開きが片側文章片側イラストで構成されている。墨汁で描かれたかのようなその絵がまたなんともいえぬ雰囲気で。
話の内容は説教臭いというかなんというか、正直楽しい物ではない。でも絵のおかげで読み続けることができる、といっても薄い本、ほんの10分もかからずに読み終わってしまうのだが。読んだあとまた絵だけ眺めたりして楽しめる。
しかし訳者あとがきを読んでちょっと反省。聞き飽きた説教のような話だと思いながら読んでいたのだけれども、そうだよね、聞き飽きたような説教はそれがまだまだ守られていないからこそ何度も繰り返されてきたのだな、と。
about book design...
カンバスに描かれたようなストライプと水玉が印刷されているカバーは、図書館の本なので最初わからなかったのだけれども、袖を見るとトレーシングペーパーだ。表紙はクロスで背は箔押し。お金かかっているなあと感心するが、なにせこの薄さで2000円だものね。でも画集と思えばその価値はある。
本文の行間が狭いのが惜しいなあ。書体はリュウミン、これも惜しい。
しかしどこにもデザイナーのクレジットがないのだけれど、もしかして社内装???
チェーホフ・コレクションは他にも何冊か出ているようだが、WEBの写真で見るとあまり一貫性がないというか、この『すぐり』が一番独特に見える。書店で実物を見てみなければ。
since 4 Jan, 2000. sorry, Japanese only. link permission free (please TrackBack!).
all contents by PINO. all rights reserved.