『ニシノユキヒコの恋と冒険』川上弘美

ISBN-4104412031
2003年11月
新潮社
1400円+税
256頁/四六判上製丸背
装幀=新潮社装幀室
10個の物語からなるこの本は、ニシノユキヒコなるさわやかな好青年のような、それでいて常に何人もの女性と関係しているような、そんな男と付き合っていた(付き合いといってもいろいろあるけど)10人の女性たちの一人称で語られる物語だ。わたしだったり、あたしだったり、私だったりする女性たちの。
なんて書くとただの恋愛小説のようだけれども、ニシノ君と付き合うということは必ずしも恋愛とイコールではない。なにせ、恋と“冒険”だし。10人もの目から見た姿を読めばたいていの人のことはわかりそうだけれども、ニシノ君はやはりとらえどころがない。そして、ああやっぱりこれは川上弘美の本だなと思うような、不思議な世界がぱくぱくと、ニシノ君の中に開いていることが時々垣間見える。
ニシノ君のような男に出会ったら私は惹かれるだろうか。その好青年的な外見にはあまり興味を持てないかもしれない。けれどぱくぱくと開くものに気づいてしまったら目が離せなくなるかもしれない。さわやかな顔をして、しかし時折、相手によってその開き具合を変えながらぱくぱくを見せるニシノ君は何やら怪しい植物のようだ。あっ、著者は「ぱくぱく」なんて表現は使っていませんよ。
単調にならない描き方や、決して時系列に物語を並べないところなど相変わらずうまいと思う。けれど今まで読んだ川上弘美の本に比べて好きかというと微妙なのは、1番最初の話にちょっとひるんでしまったからだ。それはニシノ君に対してじゃなくて語り手の女性に対してなんだけども。

about bookdesign...
本文は精興社明朝。なんか川上弘美の本は精興社が多いような気がする。語り口の“間”と合っているような。
カバーは……特色5色+箔!? 売れる作家の本はお金のかけ方が違うなあ。
図書館の本だからビニールコートされているので読んでいる時は気づかなかったのだけれども、ビニールのない袖のところを見ると汚れそうな紙だし。
2007年12月17日(月)16:27 PINO - No comments - No TrackbacksTrackBack用URLTrackBackフォーム
この記事にコメント:

Name: Mail/URL:
情報を記憶しておく

since 4 Jan, 2000. sorry, Japanese only. link permission free (please TrackBack!).
all contents by PINO. all rights reserved.