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『天使はモップを持って』近藤史恵
ISBN-4167716011
2006年6月
文春文庫
657円+税
320頁/文庫判並製
装画=飯田貴子
装丁=斎藤深雪
一昨年の年末に初めてこの作家の本
『アンハッピードッグズ』を読んで、一年の終わりにふさわしい本を読んだなあとしみじみした後、この人の本をもっと読みたいと思っていた。で、この本。
タイトルといいカバーのデザインといい本当に同じ作家か? もしや同姓同名とか? なんて思うほど違う。読み始めると……やはり全然違う。オフィスビルをたったひとりで完璧に掃除する、しかし見た目はコギャルのキリコちゃん。その彼女がオフィスで起こる事件(といってもほとんどが些細なことなんだけど)を次々解決! ……ってこれじゃあオフィスファンタジーじゃないか。そもそもたった一人で掃除なんてあり得ないし、なんか失敗だったかしら、著者に対するイメージが変わってしまったなあなんて思いながら読んでいたのだけれども。5つめの話「ロッカールームのひよこ」に唸らされる。設定には突拍子もないものがあるけれども、ただのおとぎ話じゃなくてちゃんと本質を見ているのだ。あとがきを読むと著者は実際にビル清掃の仕事をしていたことがあるらしい。ゴミ箱に入れる。シュレッダに通す。汚物入れに押し込む。それでもう自分のものではなくなり、この世から消えてしまったような気がするけれども、実際にはそれを片付ける人がいて、無造作に捨てたからこそ見えるものはいっぱいあるのだ、きっと。
と読み終わってみるとなかなか面白かったので、続編も読んでみようかと。でも手放しで褒めるほどではなくて、特に最後の「史上最悪のヒーロー」はちょっと頂けなかったかな。これが次にどう続くのかは気になりますが。もしも『アンハッピードッグズ』を先に読んでいなくてこれが最初だったら、そんなに気になる作家にはならなかったと思う。
about book design...
本文はなんだろう? 「を」が独特。で、思い出した、前にも書いたけど文春文庫は凸版明朝なんだっけ。見本ないかなあ。
『ガラス箱の蟻<ビブル警視シリーズ>』ピーター・ディキンスン
SKIN DEEP by PETER DICKINSON/皆藤幸蔵=訳
ISBN-4150011443
1971年5月
早川書房
HAYAKAWA
POCKET MYSTERY
BOOKS No.1144
330円
182頁/新書判並製
装幀=勝呂忠
一度読んでみたいと思っていたピーター・ディキンスン、まずはシリーズ最初のこれを。
薄いからすぐに読めると思いきや、なんか時間がかかる。小さい字でみっちり入った本文組のせいかと思うが、どうもそれだけではない。なんかどうも文章が古くさいのである。性格に言うと古くさいのは訳か。しかしまあそれも仕方ないだろう、本書が出たのは昭和40年代、訳者が生まれたのは明治37年なんだもの。ちなみにこの本、絶版になっているのだが、さもありなん、黒んぼとか野蛮人とかそのままでは今は出せないような言葉がいっぱい出て来るもの。
内容は本格ミステリ……のはずだがどうもミステリとしては弱いかな、犯人もその動機もいまひとつ。本書の面白いところはそれと別のところにある。殺されたのはクー族の酋長で、クー族とはニューギニアの谷間の民族だが太平洋戦争のときに白人飛行士をかくまったことから日本軍の襲撃にあう。そのわずかの生き残りがロンドンにやってきてアパートに籠って暮らしているのだ。一緒にいるクー博士は宣教師の子どもなので白人だ。人類学者の彼女にとってアパートで暮らすクー族たちは観察にもってこいな、まさにガラス箱の蟻(この邦題は絶妙)なのである。
読んでいて興味深いのはまさにその蟻、いやクー族なのである。奇妙な儀式や風習や。薄暗いアパートの中で繰り広げられるクー族の生活についてもっと知りたいなあ、と思ってしまう。事件よりもずっと。
about book design...本文は岩田細明朝。小さい字で2段組、あまり入りやすくはないね。
あとハヤカワポケットミステリってみんなこういう表紙じゃないですか。一度読んだ本をまた借りてしまったりしそうだ。
『クライマーズ・ハイ』横山秀夫
ISBN-4163220909
2003年8月
文藝春秋
1571円+税
424頁/四六上製丸背
装画=松尾たいこ
装丁=大久保明子
気になっていたけど未読だった作家の一人、横山秀夫に挑戦。
85年の御巣鷹山の日航機事故に関わる地元新聞記者たちの物語。
本を読む前にAmazonの“商品の説明”を読んだところ、著者自身も上毛新聞の記者として御巣鷹山の日航機事故の現場を取材したのだそうだ。読んでなるほど、と思う。これは当事者にしか書けないだろう。事故のことも、そして新聞社の中で起きていたことも。
最初はちまちまと読んでいたのだけれども、半ばあたりからはもう一気に。登場人物も少なくないし、それぞれの肩書きも把握しなければならないのだが、まったく混乱することなく読める。それはプロの文章だからなのだろう。いや、作家はみんなプロであるはずだが、この人は明確に伝える文章を書くプロだ。12年間の記者生活で無駄な飾りのない、必要なことを過不足なく伝える文章を書くことが身にしみ込んでいるのだろう。
ただ丁丁発止とやりあう社内でのやりとりが臨場感があるのに対し、家族などとのやりとりの感情は希薄だ。もしかすると著者自身も記者時代は主人公のように家族とうまくコミュニケーションがとれなかったのかもしれないなあ、なんて勝手に想像してしまう。
ほかの作品もぜひ読んでみたい。
Amazonには著者の言葉として
記録でも記憶でもないものを書くために、18年の歳月が必要だった。
とある。「記録でも記憶でもないもの」という言葉に考えさせられた。
about book design...
本文は岩田細明朝。
図書館の本なので帯はなかったけど、タイトルが下にあるこのデザイン、当然帯もフルカラーだな。
『クライマーズ・ハイ』横山秀夫
ISBN-4163220909
2003年8月
文藝春秋
1571円+税
424頁/四六上製丸背
装画=松尾たいこ
装丁=大久保明子
気になっていたけど未読だった作家の一人、横山秀夫に挑戦。
85年の御巣鷹山の日航機事故に関わる地元新聞記者たちの物語。
本を読む前にAmazonの“商品の説明”を読んだところ、著者自身も上毛新聞の記者として御巣鷹山の日航機事故の現場を取材したのだそうだ。読んでなるほど、と思う。これは当事者にしか書けないだろう。事故のことも、そして新聞社の中で起きていたことも。
最初はちまちまと読んでいたのだけれども、半ばあたりからはもう一気に。登場人物も少なくないし、それぞれの肩書きも把握しなければならないのだが、まったく混乱することなく読める。それはプロの文章だからなのだろう。いや、作家はみんなプロであるはずだが、この人は明確に伝える文章を書くプロだ。12年間の記者生活で無駄な飾りのない、必要なことを過不足なく伝える文章を書くことが身にしみ込んでいるのだろう。
ただ丁丁発止とやりあう社内でのやりとりが臨場感があるのに対し、家族などとのやりとりの感情は希薄だ。もしかすると著者自身も記者時代は主人公のように家族とうまくコミュニケーションがとれなかったのかもしれないなあ、なんて勝手に想像してしまう。
ほかの作品もぜひ読んでみたい。
Amazonには著者の言葉として
記録でも記憶でもないものを書くために、18年の歳月が必要だった。
とある。「記録でも記憶でもないもの」という言葉に考えさせられた。
about book design...
本文は岩田細明朝。
図書館の本なので帯はなかったけど、タイトルが下にあるこのデザイン、当然帯もフルカラーだな。