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『ひざまずいて足をお舐め』山田詠美
ISBN-4103668024
1988年8月
新潮社
1204円+税
296頁/四六変形上製
図書館でとある本を借りて帰ってから気付いた、これって続編じゃないか。前作を読んでいなくても面白いらしい、が、読んでいた方がより愉しいらしいのでだったらやはり読んでからにしたいじゃない? そしてその翌日は閉館日、困った、読む本がない……と家の本棚を物色して見つけたこの本、ずっと前に貰ったのだけれども読む気がしなくてそのままになっていたのだけど、先日読んだ
『風味絶佳』も面白かったので読んでみることに。
うーん、先にこっちを読んでいたら次を読もうという気にならなかったかもしれないな。帯に「半自伝的長編小説」とあるけれども、「半」がどれくらいなのかはしらないが、この登場人物のような人はやはり好きになれないから。途中で読むのを諦めてしまいそうにさえなってしまった。
でもこれを読んでつくづく思ったのは、作家になる人は文章を書いているということだ。なんて当たり前だと思うかもしれないが、自分は文章を書く力があるのにでも今は時間がないから(勉強が忙しいとか、仕事が忙しいとか、家庭が大変な時でとか)なんて理由を付けて書かない人は絶対に作家にはなれない。作家になる人はどんな状況でも、人から「いったいいつそんな時間が」と思われても書いているのだな。私自身も物書きになりたいなんていう淡い淡い夢を抱いたことがあるから、その点は深く突き刺さる。何につけても物事を「やろうと思う」ことと「実際にやる」こととにはものすごく違いがあると思うが、「書く」ということにはことさらに。書こうと思っているだけでは書けないのだ、永遠に。
これを読むとまだ若いというか、バッシングしてきたマスコミなどに対して「文句あるか!」と言うための本という気もするが(いやそれでも共感できる人には十分面白いのだろうが)、山田詠美はこうやって書き続けてきたのだな、今のポジションは決して一朝一夕で手に入ったものじゃないんだよ、と納得させられる。彼女の場合は「歳をとってからの作品はつまらない」なんてことにはならないんだろうな、きっと。また何か新しいものを読んでみよう。
about book design...
本文はリュウミン。
カバーがデボスだったり、見返しも印刷していたり。装丁者のクレジットがないけど新潮社だから社内かしら。
『初恋』中原みすず
ISBN-4898150640
2002年2月
リトル・モア
1600円+税
176頁/四六上製
装画=浅野忠信
装幀=池田進吾(67)
たまたま見つけた20代の女の子のブログを読んでいる。本の好きな彼女は営業事務のOLから一念発起して出版社に転職、憧れの編集の仕事をするようになった。好きな仕事ができて張り切る彼女を密かに応援していたんだけどね、結局1年で会社を辞めることに。理由は「プライベートの時間を大切にしたいから」。
仕事でいっぱしの人間になろうと思ったら、他のあらゆることを犠牲にして打ち込む時期が必要なんじゃないか、なんて思う私は古いのでしょうか。なんかもったいないなあと思いつつ、本好きだからといっていい編集者になれるとは限らないし、むしろ一番好きなことは仕事にしない方がいいのかなあなんて思ってみたり。知らない人のことなのでどうしようもないんですが。
その転職を機に彼女のブログからはだんだん遠ざかってしまったけれども、そこで以前紹介されていたのがこの本。
この甘いタイトルからは想像できないが、本書は府中3億円事件の実行犯が語る物語だ。どこにもフィクションとは書いていないし、主人公の名は著者と同じ「中原みすず」。ということは本当なの?という気持ちと、「まさかね」と思う気持ちとでなにやら落ち着かないまま読み進める。
というと事件の真相だけが焦点の謎解きものかと思うが、そうではなくて主人公の青春の物語なのだ。タイトル通り「初恋」の物語であり、友情や家族についての物語でもある。
そういった面から読むと、著者が本当に実行犯かどうかなんていうのはどうでもいいような気がしてくる。いや、きっと違うのだろうとも思ってしまう理由のひとつは「初恋」というタイトルのせいもあるのだが、元は城真琴の名前で出された
『褐色のブルース―幻想の手記』という本だったとわかるとちょっと現実味をおびてくる。そしてノンフィクションとして書かれているらしい
『真犯人―「三億円事件」31年目の真実』と登場人物がだぶっているらしいので、実行犯かどうかはともかくとして、本当に事件に関わりのある人物であったのかもしれない。
『真犯人』の方は読んでいないのだが、ネットの書評を見るととにかく文章がひどいらしい。まああまり文章がうまいと現実味に欠けるのかもしれないが。一方この『初恋』の方は事件云々ではなく、小説としてきちんと読める、といった意見も多いが、それもどうかなあという感じ。私自身はあの事件のニュースをライブで見た世代ではないのだが、この文章からだけではあの時代の雰囲気は感じられないなあ。もっと上の世代の人が読むと、リアルに感じられるのだろうか。そうすると彼や彼女の犯行だとすんなり信じられるのだろうか。
about book design...
本文はリュウミン。
装画の浅野忠信って俳優の浅野忠信本人らしい。映画に出ているわけでもないのにどうして彼の絵を使ったんだろうね。
『ナターシャ』デイヴィッド・ベズモーズギス
Natasha and other stories by David Bezmozgis/小竹由美子=訳
ISBN-4105900463
2005年3月
新潮社クレストブックス
1700円+税
200頁/四六仮フランス装
Photograph
=Yoko Takahashi
Design=Shinchosha
Book Design Division
まさにクレストブックス、という1冊。著者はラトヴィア生まれのカナダ育ちでユダヤ人。この短篇集の主人公一家もラトヴィアからカナダに移住してきたユダヤ人なので自身の体験も交えているのかしら。
内容は想像とはちょっと違っていた。『ナターシャ』というタイトルから私は勝手に華奢で繊細で清楚な、陰のある女の子を想像していたのだが、実際のナターシャは華奢で陰があるけれども、決して清楚ではなかった。それは私にとっての「ロシアの物語」のイメージが子どもの頃読んだ昔話のまま止まっていたからかもしれない。貧しくて、牧歌的で、クマが出てきそうな感じ。現代のロシアの物語はもっともっと黒い世界なのだ。
7つの短篇から成っていて、時間を追って一家がだんだんとカナダになじみ、生活も安定していくのがわかるのでほっとする。『世界で二番目に強い男』というのが一番好きかな。
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本文は精興社明朝。
『マドンナ』奥田英朗
ISBN-4062114852
2002年10月
講談社
1400円+税
380頁/四六並製・がんだれ
装画=峰岸達
装幀=鈴木成一デザイン室
Amazonからオススメされて読んでみました。
『サウスバウンド』を評価したのがオススメの理由らしい。
作家のイメージって、最初に読んだ本によるところが大きいんじゃないかしら。私が初めて読んだ奥田英朗の本は『最悪』だ。だからもっとヘビーな犯罪小説を書く人、というイメージだったので『サウスバウンド』には驚かされてしまった。こんなコミカルというか、ぶっ飛んだ登場人物の出てくる本を書く人だったのか、と。
で、この『マドンナ』はますます『最悪』から遠ざかっている。会社で、中間管理職のおじさんが女子社員にときめいたり、女部長に翻弄されたり。かといって浮気して家庭が破綻するわけでもないし、上司と争ってもクビになるまでやるわけでもない。たいしたことは起きないが、ちょっとしたことが起こる「ありそうな感じ」は同年代のサラリーマン男性にはうけそうだな。まさにオヤンシー(オヤジファンシー。(c)町山広美)。サラリーマンでもオヤジでもない私は特に感情移入も出来ないけれども、手軽に読めて楽しかったかな。
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本文は本蘭明朝。
なんで表紙をがんだれにしたんだろう。その方がオヤジ心をくすぐるからなのだろうか。若造向けじゃなくてオヤジ向けってことで高級感を出した、とか?
カバーのイラストはぴったり。若い社員が憧れる子じゃなくてあくまでもオヤジのマドンナ、って感じだ。
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